ラグビーというスポーツは非常にジャイアントキリングの起きにくいスポーツだと言われている。強いチームが弱いチームと対戦したら、ほぼ確実に強いチームが勝つ。2015年ラグビーワールドカップで日本が南アフリカに勝利したことは、ゆえに「W杯史上最も衝撃的な結果」、「スポーツ史上最大の番狂わせ」と言われるのだ。
ところが、サッカーというスポーツは手を使えないからなのかどうかは全く分からないが、強いチームが勝つとは限らない。ジャイアントキリングの起きやすいスポーツだ。
サッカーをやっていて良かったと思う。今日のような対戦相手、最年長でもアラサー世代と見受けられ、平均年齢は20代だろう。大学のサッカー部に属していたような強さ、うまさを持ち合わせたプレイヤーもちらほらいる。腹が出ている選手は誰もいない。試合前のアップメニューも充実している。19年のチームの歴史があるとはいえ、高校の休み時間サッカーから、インカレサークルという羊頭狗肉をかかげた単なるサッカー部経験のない大学生によるお遊び、社会人になっても足を洗えずにそのまま腹の出たアラフィフ、アラフォーとなり、試合前のアップは適当にじゃれているだけのチームにも一縷の勝機があるのだ。
1本目は序盤に2本程度シュートを打てたものの、ほぼボールを支配される展開であった。それでもシュートシーンにまで持っていかれていないのは、ディフェンスの充実にあった。右から井上、中野、好井、三井と並べたディフェンス陣に、高橋(通)と瀧のボランチ、サイドハーフの助っ人コンビは、相手に決定機をつくらせんと、相手選手とボールを追い回す。走りに走る。そしておしんのように耐え続ける。いつまで我々が我慢できるか。勝敗の境目はそこであろう。
2本目もボールを支配される。しかし後方からの浮き玉から森(茂)がコースをついたゴールでよもやの先制点を挙げるのである。狂喜乱舞。1本目の絶望的な相手支配下において、見極めたポイントがあった。おそらく相手は普段フットサルをしているのだろう。センターラインを固める一部選手の動きやパスは広いサッカーのピッチに最適化されておらず、相手チームのセンターラインは深く、中盤やサイドとのスペースは広大であった。むろん我々はそもそもサッカーに最適化されていないが、自明なことなので、慣れている。
森のゴールから面白いように決定機を作っていく。そしてコーナーキックの混戦から高橋賢司が決めて2-0。そして2トップの森(茂)と瀧だけで、カウンター発動で瀧が連続得点。驚愕の4-0。
とはいえ、まだハーフタイム。相手チームは円座となり真剣に修正点を議論しているように見える。我々が同じ立場だと、不機嫌になって沈黙するのと違って意識が高い。4点差あるものの、実力差からしたら、セーフティリードとはいえない。そして案の定3本目に2失点を食らう。4本目に2点差というのは、非常に危ない。なにせ相手は20代、我々の多くは40代。救ったのはPKである。3本目終了ギリギリに小原のスルーパスから抜け出した高橋賢司が倒されて獲得したPKを自身が決める。大きな追加点。
4本目。疲労困憊のアラフォー軍団に、最後の突撃をかける若者軍団の構図が容易に想像できる。2点差なら危ないが、3点差なら逃げ切れるだろう。そう思っていると右サイドバックの井上が相手ゴールキーパーの位置をよく見たループシュートを決めて、4点差に開くのだ。井上はバルば初得点だ。
しかし、試合はここで終わらなかった。ついに恐れていたことが起こる。フリーキックから1点返される。助っ人の超絶ループで追加点を挙げて4点差に戻すも、さらなる連続失点で2点差まで縮めまれた。だが、人数が12人しかいない中、森(茂)と三井が両足をつる緊急事態にも耐え、ここでタイムアップ。
サッカーはジャイアントキリングの起きやすいスポーツ。なので、我々は勝利できた。しかし、スコアは7-5。とてもサッカーのスコアではない。だが、このスコアこそ、今日の我々を体現している。肩で息をしつつ、胸を張る勝利なのだ。